9.18『銀河を産んだように』読書会レポート📝
最新号
こんにちは!詩歌担当より、第15回短歌の読書会の様子をご報告します🌌
今回は、大滝和子『銀河を産んだように』を読みました✨初めましての方も、お久しぶりの方もいらっしゃって満員御礼でした!ご参加の方々ありがとうございます🎉
これが被るのかと驚くような短歌が複数選ばれていて、不思議な巡り合わせを感じました💫みなさまの選歌が送られて来るときが、いつも興味深くたのしみです。
話題に上がった短歌をいくつかご紹介します↓
冷蔵庫ひらきてみれば鶏卵は墓のしずけさもちて並べり(P.10)
何とはなく、誰しもが毎日のように目にしている光景だと思います。「墓」というだけで静かなものですが、「墓のしずけさ」と言うことでより強調しているという意見がありました。本来は、温かく命の象徴であるような「卵」が、墓石のようにいくつも並んでいる。お話を聞いていて、冷蔵庫とは、卵に限らずかつて温かくて動くはずだった生きものたちの死体が陳列されている棚なんだと、あらためて思いました。
コンパクトカメラへむかい笑う吾こころの奥に古墳がありて(P.13)
こちらも場面としてはよくある、カメラを向けられて笑顔を作るというシーン。ところが「古墳」という単語に意外さと驚きがあります。選んでくださった方は、「古墳」に死者の眠る場所という少し怖いイメージを持ったとのこと。顔は笑っているけれど、葬った過去や感情の墓のようなものを「古墳」という言葉から連想したということでした。
ほかにも、古墳といえば前方後円墳の形を想像するため、鍵穴の形に見立てているのではないかと解釈された方もいらっしゃいました。古墳は人間を埋葬できる大きさですが、それがこころの奥にしまってあるというスケール感が、この作者の歌の特徴のひとつに思えます。
月を踏んだ宇宙飛行士のほとんどが離婚をしたと告げられている(P.24)
ニュース記事で淡々と事実を伝えるかのような文体が面白い一首です。色々な読みができ、とても話が盛り上がりました。「月を踏んだ宇宙飛行士」とその「離婚」にどんな因果関係があるのか。距離感を踏み込みすぎた、「月」という聖域に踏み込んでしまった、地球のことがちっぽけに思えてしまったなどの意見が飛び出しました。月を踏むという行為は月に到達したことの比喩とも読めますが、地球より重力が小さい月で、地面を踏むことはふわふわとした行為だというお話を聞いて、冷静な口調のこの歌が、「ほとんど」とか、曖昧でぼんやりしたことを述べている印象に変わったのも面白かったです。
教室の窓いっせいに拍つ驟雨かがようバッハの楽となりたり(P.33)
この雨の奏でる音楽が、どの楽器の音に一番近いかということで議論が盛り上がりました。ほかの連作の中には『セロ弾きのゴーシュ』でも有名な宮沢賢治について詠まれていることもあり、最初にチェロが挙げられましたが、古楽のイメージで、しかも雨がぽつぽつと弾くような様子から、チェンバロがもっとも適しているのではないかという結論に至りました。
花巻の記念館には光年の詩をみごもりし男の写真(P.73)
「オリオンの継承まぎれなき夜よ宮沢賢治に電話かけたし」(P.28)という賢治の名が詠み込まれた歌も今回話題に上がりましたが、こちらの歌で名前がはっきり書かれていないことが重要だったとは、今回お話を伺って初めて気が付いたことでした。音数だけでいえば、「男」は「賢治」でもよさそうなところです。しかし、宮沢賢治は生前『春と修羅』『注文の多い料理店』の二冊を自費出版したのみで、一般にはほとんど無名に近かったそうです。それを踏まえると、この歌に詠まれている賢治の生前の写真は、まだ我々のイメージする宮沢賢治ではなかった賢治の姿なのだということでした。この歌集を取り上げたのは偶々でしたが、生誕130周年の今年に、この歌を読み語り合うことができたのは幸福に思います。
パソコンのZたたけり にんげんを必要とする動物すくなし(P.87)
「冷蔵庫」の歌、「月を踏む」の歌につづいて、こちらも選んだ方が複数いらっしゃった一首でした。「にんげんを必要とする動物」が少ないことはたしかにと思いますが、「パソコンのZ」キーとどう関係するのかはぱっとわからず、謎が残ります。Zはアルファベットの最後であり、パソコンのショートカットキーではCtrlキーと同時に押すことで、一つ前の操作を打ち消して「元に戻す」ことができます。食べる食べられるの関係を、一つずつ消していくと人間だけが取り残される、天敵となるような、人間を食べる動物がほぼいないという複数の方の解釈を聞いて納得に近づきました。それにしても、いつ読んでも古びないので忘れていましたが、この『銀河を産んだように』は三十年以上前に刊行された歌集です。パソコンを使う人も限られた層で、その中でZキーに着目してこのように詠むなんて……今でいえば一体どんな偉業なのか、見当もつきません。
今回は満員御礼で8名の方にお集りいただきました!初めて読んだがとても好きな歌集になったというお声を複数いただいて、個人的にも大好きな一冊なので大変うれしく思いました🎶第一歌集~第三歌集までがコンパクトにまとまった一冊で、今回は第一歌集の部分だけを扱いました(それでも語り足りず、ここにも書ききれない程です)ので、続きもぜひ読んでもらえたらと思います🎋🎻ご参加くださったみなさま、本当にありがとうございました!!
当店は、埼玉県朝霞市にある本屋CHIENOWA BASEです📚東武東上線「朝霞」駅より徒歩6分、池袋からは15分ほどで着きます🚃
次回10/16(金)は現代川柳アンソロジー『ゆきどけ産声翻訳機』の読書会を予定しております!サラリーマン川柳でもシルバー川柳でもない、なにが起きているのかよくわからないけどかっこよくて、なんだか切なくもなる不思議な現代川柳の世界をご一緒しませんか?なんと今を時めく著者の暮田真名さんが遊びに来てくださいます🎀